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人間の仕事 その3「自分のため、人のため」   

とある人がこれを読んで心の病が治ったとの事です。
と書きましたが、今日メールが来て多少残滓が有るようですが順調に快復しているとの事です。
こういう話を聞くとホッとするのですが、やはり自分で気づくしかないのかも知れません。
ここで紹介しているのは、あくまで抜粋でして実際には2~3倍の分量がありますので、ご了承願います。


田中一村の旧居
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「自分のため、人のため」


 不思議なことに、人のために生きると言いながら、人のために生きるということは、その人の命の代わりに生きることが出来るか。そうではない。自分を犠牲にしてその人のために生きたとしても、その人のためにはならない。自分が命を犠牲にして尽くされたとしても自分が幸せを感ずることは出来ない。人のためといっても決して、今、一緒に生きている人のためではない。それは先に死んでいった人のためであるし、自分が死んだ後、生きている人のために生きるんです。そういう意味では一緒に生きていても、やがてはどちらかが先に死ぬということですから、やがて死んでいく人のためにということはあるかも知れませんが、自分より先に死んでいった人のために生きるというのが人間にとって本当にしたいことなんですね。あなた達も色んな事を経験していけば、次第にはっきりしてくることでしょうけど、自分のために生きているわけではないんです。自分のためであれば、人生なんか早くやめてしまっても別にどういうことはない。長さでもない、やっていることでもない。その人の価値なんて、人生の長さでも、能力でも、やった仕事でもない。生きていることそのものが一人ひとりの人生ですから、どういう生き方をしようが、どういう死に方をしようが、そのことにおいて差はありません。自分自身のために生きているものであれば、ですよ。


人間の仕事 その3「自分のため、人のため」_d0040314_2334285.jpg ところがその人生が自分のためではないものであれば、人のために生きるということであれば、与えられた時間を人のために生きていることによって、別の形で人生に、今まで自分たちが見ていた人生でないものを見た時に、その人生が自分に与えるものは全く違ったものになる。そしてその時に自分が生きているというのは、本当はそういうことであったのか。人のためにと言いましたが、人のためにこそ自分は生きていたんだ、それは死んだもののためにこそ生きているんです。それを亡くなった人を「弔う」と言います。弔うというのは訪れるという意味でもありますが、死んだ人に対して、その人を意識しながら、その人といつも語り合う。死んだ人を意識しながら死んだ人の思いを心の中に刻み続けること、それが人間の仕事の、私たちが具体的に生きていく中で、なさねばならぬことではなかろうかと思うんです。あなたたちにとっても死んでいった人というのは少なからずいるはずです。不幸にして事故で友達を亡くす場合もある。病気で亡くす場合もあるでしょう。肉親を亡くす場合もある。極端な場合は自分が殺してしまう場合もあるかもしれない。でも殺すという形を取ったとしても、死んでいった命をもう一度、自分が引き受けていくことでしか、人間の仕事をなすことはできんということです。


 そういう仕事を自分自身の仕事として意識し始めたとき、人生の仕事の意味が変わってまいります。それは生きている限り、自分の人生を通して死んでいった人の人生を、自分の人生を通して証明していく。自分だけの人生は限られています。やれる時間も限られているかもしれませんが、そういう思いを持って生きていることによって、死んだ人全部が違った形で「生きた」ということの意味をこの世界に残すことが出来るということです。私たちが生まれたということは、仕事をするということによって、様々なものを残したいという願望があるでしょうが、残されたものはどこに残るのかということです。それは私たちが生きる姿の中に残っている。自分の生きる姿を通して、そこに残されていったものが、自分の心の中だけに起こったのかということでしょうが、そうではないんです。それは人間の仕事として自分が死んだ人の命を引き受けて生きてきた人達の姿を見れば分かることですが、その人の姿が一人あることによって、その周りに広がる世界が変わるということです。人間の仕事として、そういう死んでいった人達の思いを引き継ぐ人が一人現れると、その人によって世界が救われるということです。


 それは自分の思いがどうこうではなく、そういう生き方をしている人が一人いることによって、人間のすばらしさが世界の中に広がっていくということです。もっと言えば、そういう人が一人いるから世界は輝くんです。花が美しく見えるのも、山が美しく輝くのも、美しい世界が広がるのは、そういう人が一人いるから輝くんです。そういう形で世界を輝かしていく存在になるということ、それは自分で輝かそうとしてもそうはいかんかもしれませんがその人がそのような生き方をしたことによって世界が輝いてきたということです。




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その4....「つながり」に続く

by e_jovanni | 2006-01-09 23:14 | 人間の仕事

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