「心奪われ阿呆のような日流れ」   

Excite 時実新子さん死去 川柳作家

時実新子 (ときざね・しんこ)  本名 大野恵美子
          1929年 岡山市生まれ
          1945年 岡山県立西大寺高女卒
          1946年 姫路市へ嫁ぐ(17才)
          1947年 長女誕生(18才)
          1951年 長男誕生(22才)
          1985年 夫死亡
          1987年 曽我碌郎と結婚(58才)


姫路の街に長く居られて名前は新聞などでよく知ってはいたし、どこかでお会いしていると思うのだが、改めて作品を拝見すると。
これは川柳なのですかね。
何か一行詩の様な雰囲気を醸し出しているのですが。
恋愛、不倫の詩。
ここまで燃えられるのも羨ましい限りですね。

まあ、あの時代は特にこんな恋愛は困難でしたでしょうから余計にこう情熱的になるんですかね。女性はやっぱり灰になるまでですか。
私なんか三十路の頃にそんなのは終わってしまったんですがね。
合掌。


とにかく一行詩の様な川柳をご覧下さい。

「しあわせを話すと友の瞳(め)が光る」
「晶子曼陀羅子らの寝顔に責められる」
「爪を切る時にも思う人のあり」


「心奪われ阿呆のような日が流れ」

「箸重ねて洗う縁(えにし)をふと思う」
「人は言う簡単に言う邪恋の名」
「慕われているしあわせの髪を梳き」
「柚子しぼる女の生命(いのち)ふと感じ」
「年の差を思う夜道は石ばかり」
「子を寝かせやっと私の私なり」
「孤独ではないけど 海へ石を投げ」
「誰も見ぬ部屋に心をさらけだし」
「熱の舌しびれるように人を恋う」
「われに棲む女をうとむ夜が来る」
「力の限り男をほふる鐘を打つ」
「母で妻で女で人間のわたくし」
「ぬけがらの私が妻という演技」
「狂う眼はこうか鏡に訊いてみる」
「主婦という名の腕時計何度見る」
「触れ合えば即ち罪となる指の」
「十七の花嫁なりし有夫恋」
「この家の子を生み柱光らせて」
「たかぶりを人には告げず物を煮る」
「憎いその腕(かいな)の中で敗けてゆく」
「自らを削るほかなき思慕である」
「去ってゆく足に乱れのない憎さ」
「耳の形が思い出せない好きなひと」
「足裏に火を踏む恋のまっしぐら」
「茶碗伏せたように黙っている夫」
「凶暴な愛がほしいの煙突よ」

「泣いた泣いた沢山泣いたたくあんかじる」

「売らんかな悪女の白い膝がしら」
「夫にもう隠すものなし滅ぶのみ」
「別れの季節今年の蝉は耳朶に鳴く」
「乳房つんつん逢いたくないと言うことも」
「二人共すこしずつ老い時々逢い」
「打ち明けた悔いはなけれどころそうか」
「みんな善人で銃殺刑である」
「花鉢抱いて小さな幸(さち)がいやになる」
「脈うつは九月の肌にして多恨」
「放心も四日におよびとがめられ」
「道しるべあれから狂い幸福です」
「愛もろし卵を割れば傷つく指」
「雨の日のダイヤル通じそうで切る」
「あの人を思いこの人見ています」
「美しい眼だよ悪事を知りつくし」
「滝音よいつまで人の妻ならん」
「恋はうたかたよ湯気立つ栗ごはん」
「花ゆさりゆさりあなたを殺そうか」
「逢うて来て夜の西瓜を真っぷたつ」
「愛から戻り魚を焦がす裏表」
「菜の花菜の花子供でも産もうかな」
「彼も四十の屈折見せて昼の影」
「投げられた茶碗を拾う私を拾う」
「火刑待つ すでに独善かもしれぬ」


「女への手紙糊壷たっぷりと」

「乳房つんつん私に背き恋をする」








時実 新子さん(ときざね・しんこ=川柳作家、エッセイスト)10日死去、78歳。岡山市出身。葬儀・告別式は近親者で営む。喪主は夫曽我六郎(そが・ろくろう)氏。関係者で「時実新子さんをしのぶ会」(仮称)を開くが日程は未定。63年に第一句集「新子」を発表。87年刊行の「おっとあるおんなのこい」との副題がある句集「有夫恋」が注目され「川柳界の与謝野晶子」と呼ばれて話題になった。

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by e_jovanni | 2007-03-10 23:38 | いっちょかみ

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